- 重工業の脱炭素化を徹底的に加速しなければ、2050年までにネットゼロ・エミッションは達成できません。
- 世界経済フォーラムがアクセンチュアと共同で開発した初のネットゼロ・インダストリー・トラッカーは、課題の規模を明らかにし、産業界をネットゼロの軌道に乗せる方法に光を当てています。
- データのギャップに対処することで、解決手段がよりクリアになり、課題解決のペースが上がります。
- ネットゼロの実現に必要なテクノロジー、インフラ、需要シグナル、政策、投資を促進する、具体的な行動を起こすことが、これまで以上に急務となっています。
今日、産業部門が世界のエネルギー消費に占める割合は40%近くにのぼります。また、世界の温室効果ガス排出量において産業部門は30%以上を占めています。このうち約80%は、鉄鋼、セメント、アルミニウム、アンモニア、石油・ガスの5つの産業から排出されています。エネルギーや産業用製品に対する需要は、2050年までにさらに30%から80%増加すると予測されています。産業界の脱炭素化を徹底して加速しなければ、産業排出量は需要増とともに増加する一方です。つまり、世界が目指すネットゼロ達成がますます遠のきかねないということです。
ネットゼロ目標は、長期的な目標を定めるために必要ですが、前年比での進捗を促すには不十分です。
多くの低排出生産技術が大規模に実証されており、例えば、天然ガスでは80%、セメントと鉄鋼では95%、アンモニアでは-100%と、排出量を劇的に削減することができます。ところが、これらの技術は従来のものに比べるとコストが格段に高くなっています。現在の開発ペースでは、2020年代後半までに低炭素技術が商業的に利用可能になることはおろか、競争力のあるものになるかもはっきりしません。つまり、そうした態勢が整うのは、鉄鋼は2025年、セメントとアルミニウムは2030年以降になるということです。今後、規模の経済、効率性の向上、さらなるイノベーションがコスト低減を後押しする可能性が高いと思われます。ただし、それはより本格的なプロジェクトが展開された場合にのみ、実現可能です。パブリックセクターと企業が一体となり、全世界でこのようなプロジェクトを早急に増加させる必要があります。
重工業においてネットゼロ目標を達成するための準備段階。
Image: Net Zero Industry Tracker 2022 Edition
出典:世界経済フォーラムJapan
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